Hideが出張中のある日、2人で夕飯を食べていると唐突に最近の出来事を話し始めた。
いつも昼休みに遊ぶグループの仲間が、時折彼女を仲間はずれにしたり意地悪をしたりするのだという。思い当たる理由はない。一緒に遊びたいだけなのに逃げられたり、遊んでいても自分だけ蚊帳の外にされたりすることがあるのだという。たどたどしい口調で説明する内に目が涙でいっぱいになっていった。
ああやはり、この年齢の女の子には避けて通れないことなのだろうか。自分の小学生のころの苦い経験もよみがえる。
話をじっくりと聞いた後で、彼女のそれ以前の行動について一緒に振り返る。誰に対してもフェアな行動をとっていたか、相手の気持ちになって考えることはできているか、理由もなく意地悪をしたりしていないか。どうやら仲間はずれの直接的な原因に心当たりはないらしい。
では間接的には何かあるのだろうか。Yuu以外のみんなは4年生でも同じクラスになったがYuuだけは別であること、幼馴染みのように昔から一緒に遊んでいた彼らに対して、Yuuは新参ものであること、1人ひとりと話をする限りはやさしくしてくれるのに、グループになると意地悪になることなど、彼女なりに考えて話してくれた。
推察するに、確固たる原因はないのだと思う。友達同士のちょっと行き過ぎた仲間意識に端を発し、やがて誰からともなく仮想弱者を作り出して意地悪の標的にするなんていう話、きっとどこの小学校にもあるのだろう。それでも親としては心が痛む。こんなときどうやって彼女の力になることができるのか。
話を聴きながら、自分の経験を掘り起こし、考える。
『Yuuがお友だちに対してまちがったことをしていないと自信がもてるのであれば、これからもその正しい行動を続けなさい。とーさんと私は、Yuuがお友だちを大切にできる子だと信じているから、あなたはあなたのままでいたらいい。いつものなかまと話ができるのであれば、どうして仲間はずれにするのかを聞いたり、やめてほしいとお願いしたりしてみたらいい。それでももし、いじわるをやめてくれないのであれば、他に良い時間をすごせる友だちがたくさんいるのだから、その子たちと遊んだらいいよ。』
というようなことを話すと、スッキリとした顔で、うん、と頷いたが、『でも、仲良しのお友だちとか、親友とよべるお友だちもほしいんだよね』と言い添える。
『親友というのは、お互いを大切にするし、尊敬し合えるお友だちのことだね。そういうお友だちをつくろうね。』
翌日からまた愉しそうに学校に出かけていったYuu。数日するとまた仲間はずれがあったらしい。今度はさほどめげた感じでもなく報告してくれた。『なんかヤな感じだから、明日からAとかJとかと遊ぶ(A君とJ君はだれにでもフェアらしい)』とのこと。数日前と違うのは、起こった出来事に対して毅然と対応しようとしているところ。自分は間違っていないという自信があるのだろう。
Yuuの様子を観察するのと並行して、担任の先生には報告をしてある。何か変化があれば知らせてくれるほか、機会をみてYuuと話をしてみてくれるとのこと。親や担任に相談できている内は大丈夫。こういう経験を経て、友だちとの上手な付き合い方やバランスのよい距離感をみにつけていってくれればいい(難しいことだけど)。
やっぱり、この子はスポーツ漬けにしておくのが一番かな。嫌なことがあった後の週末は、バァバに買ってもらったテニスウェアととーさんのお土産のオロナミンCでご機嫌。